この映画一発で理解できる? 超難解映画『マルホランド・ドライブ』レビュー
この映画は、観る人の理解を拒む映画です。
難解な映画ランキングで必ず上位に食い込みます。
観たけど、理解不能……。
という人のために、理解する手がかりを書いてみます。
といっても、この映画の解釈はネットにいくらでも氾濫してます。あくまで一つの解釈ってことで読んでね。
では、出発しましょう。映画の迷宮へ。
もちろんネタバレだよ!
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あらすじ
マルホランド・ドライブ(実在する道路)で自動車事故が起こる。衝撃で記憶を失った女は、なんとかある家にたどりつく。
そこはハリウッド女優の夢に燃えるルースの家だった。彼女とルースは行動を共にすることになり、記憶を取り戻すために協力し合うことに……。
二部構成に注意せよ
この映画は前半と後半に別れます。
その境界線はここ。
時間は1:55:00のところですね。この映画は2時間26分の映画なので、ほとんどが前半ということになります。
前半は甘い夢、後半は厳しい現実
女優志望のルース。前半では万事が快調に運んでいます。順風満帆に女優としてのキャリアを積んでいます。
全部自分の好きに描いた夢なんだから、そりゃ順風満帆よね
ただ、順調に見える前半にも突然こんな人が現れるシーンがあるんです。
実はこの人、ルース自身なんです! 彼女の分身みたいな存在ですね。
ジキルとハイドを知ってますか?
一人の人間の中に表の人格と裏の人格があるってやつです。
女優として成功しているルースと、夢破れて浮浪者になっているルースの二人が同時存在してるわけです。
浮浪者の正体はルース自身
浮浪者の正体は、ルース(表の人格)に封印されたルース(裏の人格)なんです。
ルースは夢破れた自分を否定するあまり裏の人格を作り出し、そっちに不幸を全て押しつけてしまったんです。
多重人格みたいなものですね。
耐えきれない不幸があったとき、それを肩代わりさせるために新しい人格を作り出すってことは実際にあるわけです。
有名な例だと『24人のビリー・ミリガン』が多重人格になった実際の人物です。
青い箱の所有者は浮浪者だった
終盤で分かりますが、青い箱は浮浪者の持ち物でした。
裏の人格として不幸を押し付けられた浮浪者は表の人格を憎みました。
そこで浮浪者は、青い箱の中にルースが女優になれず挫折してしまう厳しい現実を封印したんです。そして誰かが開けるのを虎視眈々と待った……。
パンドラの箱みたいなものですね。
開けると現実が流れ出してくるわけです。
この青い箱を開けさえしなければ……。ルースは永遠に甘い夢を見続けることができたのかもしれません。
クラブのシーンで夢が破られる
ここは、問題の青い箱を開けてしまうきっかけとなったシーンです。
「全て録音されている」と司会者が喝破します。
つまりこの世界はルースの作り出した夢だということを暗に示しているわけです。
これを聞いたルースは激しく動揺します。
自分が夢の支配者であるはずなのに、その夢が破られようとしているからです。
その後、冒頭の事故で記憶喪失になっていた女はこの世界が夢ではないかと疑い━━青い箱を開けてしまいます。
箱の中からは現実が流れ出し、女優として成功した夢は遠くに消え去ってしまう。
そして代わりに、映画の後半部分である厳しい現実に直面することになります。
恐怖のラストシーン
ラストは、よくわかりませんっ!(きっぱり)
とても恐ろしいシーンなんですが、意味不明です。
自分を欺いていた罪悪感が一挙に噴出して、あんな結末になったんでしょうか。
ホラー映画ではないのですが、あのラストシーンは一度見たら、墓に入っても忘れませんよ。
まとめ
監督はこの映画について「俺はテーマを語らない主義だ」と言って詳細を解説していません。
多様な解釈が成り立つ余地があります。
上で述べた僕の解釈は正直、簡単に論破されます。
もっと説得力のある解釈はたくさんあるでしょう。
ただ、この映画のながーい前半部分は、ハリウッド女優の夢破れた女が見た現実逃避の夢だった━━という解釈はどの人でもおおよそ一致するかと思います。
ハリウッドの華やかなイメージの裏側は、夢の墓場です。
1人の女優の成功の裏には、1000人の女優の死体があります。
おー怖い怖い。実際にアメリカのマルホランドドライブに行ったら、この映画を思い出すだろうなあ。
その時は、夢破れた無名の女優たちの冥福を祈るのを忘れちゃだめですよ!
マルホランド・ドライブを描いた絵
実はマルホランド・ドライブを描いた絵があります。
「Hockney Mulholland Drive」で検索すると出てきますので、ぜひ見てください。
ちなみにその絵は、イギリスの画家ホックニーが描いたものです。
実際のマルホランド・ドライブを抽象的に描いたものです。
前衛的で抽象的な絵なので、ぐにゃぐにゃしてて分かりづらいですが……。
じーっと見つめていると、この映画みたいな迷宮に誘われていきますのでご注意を。
関連映画はこちら
『マルホランド・ドライブ』は、『サンセット大通り』のオマージュと言われています。