1テイクの火薬量がギネス記録認定!『アンノウンソルジャー』レビュー ネタバレなし
新宿武蔵野館にて、フィンランド映画『アンノウン・ソルジャー 英雄なき戦場』を観ました。
2時間近い映画の内のほとんどが戦闘シーンだったような気がする。
やはり劇場の大スクリーンで見る戦争映画は迫力が違う!
武蔵野の紹介はこちら
フィンランドの歴史の知識がなくても、純粋に戦争映画として楽しめる映画です。
事前の知識は不要!
あらすじ
時は第二次世界大戦。
ソ連に占領された国土を取り返すために、ドイツと手を組み再びソ連との戦闘を始めたフィンランド。その戦争は「継続戦争」と呼ばれる。
無名戦士の視点から、終わりなき戦争が描かれる。
戦場においては兵士でさえ弱者になる
とにかく戦闘シーンが多いこの映画。
観客はずっと無名戦士の視点で戦争を体験することになる。
どでかい戦車に地雷や手りゅう弾を放り投げたり、兵士たちは巨大な敵に立ち向かう。
ここで気づいたのだが、この映画における視点はずっと兵士に固定されている。
戦車の視点から戦争が描かれることがない。
戦争における弱者とは、ただの兵士である歩兵のこと。
戦争における強者とは、何もかもなぎ倒して進む戦車のこと。
第一次世界大戦で初めて戦車が出現したことによって、ただの歩兵は弱者へと転落した。
この映画は一貫して、戦争における弱者の視点から描いている。
だから、戦闘シーンは恐ろしい。
砲弾をぶっぱなし、障害物をなぎ倒しながらあっという間に近づいてきて、兵士をペチャンコにしようとする戦車は、まさに戦争の化け物そのものだ。
弱者よりもさらに弱い者たち
戦争における弱者とは歩兵のことだが、それよりもさらに弱い存在がいる。
負傷兵だ。
地雷で足をやられたり、砲弾の破片で視力を失った歩兵たちは、弱者からさらに最弱者へと転落する。
生かすも殺すも敵次第。
自分では逃げることさえできない。
この映画では、そんな最弱者たちが細かく描かれているのがすごい。
目を潰されてもなお生きようとする無名戦士たちの最後の叫びは、劇場をさえも戦場に変えてしまうような力がある。
不意打ちの銃弾の恐ろしさ
戦闘シーンが多いとはいえ、ところどころには戦闘の合間のパーティーが描かれたり、いったん帰還した兵士が家族に会いに行くシーンがある。
そのシーンでは、戦場のように砲弾が炸裂するような音は聞こえない平和な世界なのだ。
だが、それもつかの間のこと。
また戦場に戻った兵士たちは、戦場を行進する。
戦闘開始の前は、恐ろしく静か。
嵐の前の静けさというやつです。
そんな静寂をいきなり破って、不意打ちを狙う敵兵の銃弾が飛んでくる。
僕を含む観客はみんな驚き、心臓が跳ね上がったと思う。
これが戦場なのかと。
銃弾一発の音とは、あれほどに巨大なのかと。
心臓の弱い人が劇場に戦争映画を見に行かないほうがいいのには、こんな理由があるのだ。
武器のデティールの細かさ
僕はミリオタじゃないので分からないけれど、この映画、武器がかなり細かく描かれているそう。
たとえばフィンランド兵士が使っていたこの武器。
映画のフィンランド兵はこの武器を「いい武器だ」と言っていた。
やたら発射音のうるさいこの銃だが、「フィンランド救国の武器」とまで呼ばれているらしい。
原作小説
原作小説は『The Unknown Soldier』という小説で、著者はフィンランド人のヴァイノ・リンナ。
フィンランドでは超有名な作品。
残念ながら日本語訳はない。英訳版は↓↓↓
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フィンランドの独立記念日には、よく『The Unknown Soldier』の映画版がTV放映されるらしい。
フィンランドの現在の平和のありがたさを再確認するために。
今回の映画化は三度目になるらしいが、フィンランドの人々は果たして今回の映画化に満足したのだろうか?
まとめ
一貫して無名戦士の視点から戦争を描いた映画だ。
見終わった後には、実際に戦場で戦ったかのような気だるい疲労感があなたを襲うかもしれない。
僕たち非戦闘員からすれば、機関銃を持つ兵士たちは紛れもない強者だが、彼らもまた戦車が行き交う戦場においては弱者となるのだ。
どの世界でもそうだが、上には上がいるものだ。