宗教の裏に潜む性的虐待をたった数人の記者が暴く!『スポットライト 世紀のスクープ』レビュー
宗教の力は今なお絶大です。
科学が神を否定した現代であっても、科学的根拠のない神という存在にすがろうとする人たちは大勢います……。
彼らは神に全幅の信頼を置いているんですね。
そんな彼らにとって、神父とは神の代理人であり、神に最も近い存在なのです。
そんな神父に性的虐待をされたら……。
誰にも暴けなかったタブーを暴いた記者たちの奮闘を描いたのがこの映画。傑作です。
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あらすじ
マサチューセッツ州ボストンの日刊紙『ボストン・グローブ』は、マーティ・バロンを新編集長として迎え入れる。
バロンは、神父の性的虐待事件を調査するように進言する。
少数精鋭の取材チーム「スポットライト」は、調査中に様々な取材妨害を受けながらも、世界規模のタブーに切りこんでいく……。
カトリック教会の仕組み
カトリック教会のシステムは、バチカンにいるたった一人の法王を中心にして蜘蛛の巣のように世界中に広がっています。
一番下の「助祭」以外は、基本的に結婚が禁止されています。
聖職につく以上、生涯独身を貫かないといけないというわけです。
多数の性的虐待が明らかになったのは、下から二番目の「司祭」です。
教会において結婚や洗礼の儀式を執り行うため、信者と接する回数が多く、一般的には「神父」と呼ばれます。
神父とはいわば現場の人です。
信者との距離がとても近いため、密室の場で性的虐待が起こる可能性が高いのでしょうね。
当然、日本にもカトリック教会は存在します。その数は800ほど。
燃え始めた蜘蛛の巣
カトリック教会の絶大な力は、全世界に蜘蛛の巣のように広がっています。
世界中に散らばるカトリック教会は、その力を誇示しています。
2002年にアメリカの『ボストン・グローブ』の記者数人が、神父による性的虐待をすっぱ抜いたことにより、騒動は全世界に飛び火することに。
すごいよね。ほんの数人の記者が、誰もが目を背けていたカトリック教会の腐敗を暴いたんだから。
その後、世界中から性的虐待の被害の実態が報告され、カトリック教会のシステムである蜘蛛の巣は大火事の様相を呈することに……。
ジャーナリズムのあり方とは?
おそらく神父による虐待を告発しようとした勇気ある人々は、それ以前にもたくさんいたでしょう。
彼らは教会の絶大な力の前に屈服し、真実を言えずにいたのです。
しかし、『ボストン・グローブ』の記者がこの問題を記事にすると、大勢の被害者たちが被害を告白しはじめました。
このくだりは映画のラストで描かれているのですが、なかなかに感動的です。
なんだか「ME TOO運動」と似てるね
ジャーナリズムの一つのあり方としては、やはり民衆の声なき声を拾い上げることでしょう。
今のジャーナリストたちは、誰でも知っているトピックについていかに批評するか、ということばかりにかまけているような気がします。
単に過激な批評を書けばいいんだと思っているジャーナリストも多いでしょう。
水面下に潜んでいて誰も知らない問題をすくい上げて記事にしようというジャーナリストは、少ないような気がするんですよね……。
本当のジャーナリストのあり方というのも、この映画を通して考えさせられます。
虐待は日本にもあった!
世界中に飛び火した神父による虐待問題ですが、日本では長らく対岸の火事と受け止められてきたそうです。
しかし!
文藝春秋2019年3月号に、
「“バチカンの 悪夢”が日本でもあった! カトリック神父『小児性的虐待』を実名告発する」
という記事が出ました。
それによると、
被害者の竹中さんは、イタリアに本拠を置く修道会「サレジオ会」が運営する児童養護施設で中学卒業までの9年間を過ごした。施設の園長だった長身の白人神父は、いじめられ孤独だった竹中少年の心理に巧みにつけ込み、祭服姿で性行為を強いていた。
うーん。やはり日本でもありますよねそりゃ。
日本だけが例外になる根拠なんてないもんね。
蜘蛛の巣は日本でも燃えはじめたようです。
まとめ
ジャーナリズムとは世界をより良くするために真実を追い求める職業のことです。
ジャーナリストって控えめに言っても世界を変えられる職業なんですよ。
だってこの映画の記者だって、ほんの数人ですっぱ抜いた記事が長い歴史を持つカトリック教会を揺るがしたんですからね。
まさに世界規模の大変革を起こしたわけです。
ジャーナリストってすごい!
この映画を見た人なら、必ずそう言ってくれると思います。